口を開けば呆れるような台詞しか言わねぇ。
だけど何でか引き寄せられるっていうか、なんていうか、
なんかよくわかんないけど、あいつにはあるんだ、そういうの。
惑星キミ
「おい、祐希。お前今日確か一時間目の数学当る日じゃねぇのか?
朝っぱらからアニメ雑誌たぁいいご身分じゃねぇか。」いつものことながら同クラスの腐れ縁幼馴染の浅羽祐希は
アニメ雑誌に視線を落とし、その行為が楽しいのか、楽しくないのかすらよくわからない表情でいた。コイツのポーカーフェイスは今に始まったことじゃないが、
約10年一緒にいてもその謎は深まるばかりだ。
まぁ、だからといってコイツの腹の中を知ってどうこうと云う訳でもないし、
知ろうという気持ちもミジンコ一匹分も産まれないのだが。「オイ、聞いてんのか?」
とりあえずもう一度だけ声をかけてみる。
全く、それにしてもこの浅場祐希という奴は
人の話を本当に聞かない、というか聞こうとしていない。
まぁ、これも昔からのことだから…ってもうそんなこと考えてるのも馬鹿らしくなっていると、
「……何、さっきから。俺は今一日の中で1、2を争う
“重要な作業”をしてる最中なんですから。ちょっと静かにしててよ。」
「だぁ!もう何だお前は!“重要な作業”って、秋のアニメの最新情報を収集することなのか!?
もっとこう、青春してま〜す、汗かいてま〜す、努力してま〜す、みたいな爽やかな学生生活を過ごそうという意思はないのか!?」
「ない。」
「………わぁったよ。もう何も言わねぇから。」これもまたいつもと同じような会話。昔からずっと変わらない。
こうなるともう俺が妥協するしかこの不毛な会話の打開策はないのだ。
そうこうしている内にチャイムが鳴ったのでとりあえず自分の席に戻る。
今週は俺が週番だから朝の号令をかける。
結局一時間目の数学で祐希はしっかりと当てられたが、
「浅羽、次の問題は。」
「……x=cos27.5°」いつの間にとく暇があったんだろうという疑問ばかりが浮かんでくるような明瞭な解答が返ってきたのだった。
結局その後の授業はまたまたいつもの通りで素晴らしい程に深い眠りにつき、
昼休み以外、授業と授業の間の礼にさえ一度も席を立つことはなかった。
それから日常通りのゆっくりだがしっかりとした今日という一日は過ぎていった。
放課後、週番の俺は掃除の後も黒板やら、日誌やらが残っていたので
部活があるという春と悠太と別れ、「一人じゃ嫌だー!ゆっきーと帰る!!どけ、かなめっち!!」
と言って飛びかかったが、ちょうどその時今度発表が予定されている
調べ学習の班内会議へと連行されて行った祐希を見て落胆する千鶴をかわし、眺め、そして見送った。
窓の外は綺麗な夕焼けに染まっていて、
蛍光灯を消していて日誌を書く俺の手にその真っ赤な色が映し出された頃、祐希が教室にとぼとぼと入ってきた。
「こき使われたのか?祐希。」
「…いや、逆。別に何もしないで寝てたけど。」
「だったら何でそんなに疲れてんだよ。」
「寝るだけでも体力って使うもんだよ。俺、これでいて毎日ハードに体力使ってんだから。」
「じゃ、寝なきゃいいじゃねぇか。」
「……わかってないなぁ。これだから要は。」
「うるさい、お前の眠りに懸けるこだわりなぞわかりたくもないわ!」
本当にいつも通り。こんなことの繰り返し。
でもこんなんでいい、いつまでもこのままの時が流れればいい。
あきもせず馬鹿なこと言って騒いでいればいい。
コイツとなら、多分、いや絶対このままでいられる。そんな気がする。
なんて会話の後の数拍の沈黙に珍しく俺が感傷的にぼんやりしていると
「そういえば要、今日助かった。」
「あ?」
「数学当てられたやつ。」
「あぁ、ホントにお前、俺が知らせてやらなかったら…」
「あぁ、ちがうちがう。俺要のノートこないだ勝手に見たから。それで見覚えあったから答えられた。」
「お前な!珍しくお前がちゃんと起きててかつしっかり解答言いやがったら関心してたのにっ!」
「まぁ、これもまたひとつの技術ですから。」
「何が技術だ!ったく…」
「要の字、さ。」
「あ?」
人のノートを勝手に見た上にコイツはとり方に文句までつけやがるのか。「綺麗だったから。読みやすかった、っていうか線が細くてホント綺麗だったから。
だからなんとなく眺めてたら解答覚えちゃった。要でもこんなに繊細な字が書けるもんなのかと思って。」
「褒めてんのはいいが、最後の“要でも”ってのは余計だ!!」
何て言いつつも顔が真っ赤になる。
いきなり人のこと褒めやがって。
でもやっぱり褒められれば嬉しいもんだ。
照れ隠しにふい、とそっぽを向いてしまう。
その時気がついた。
今日一日コイツに振り回されていた…?
いや、日常的に振り回されてる………!?
でも嫌な気がしない、
それどころかさっきまで“このままの時が流れればいい”なんてことまで考えてしまっていた……!
気がつくには遅すぎた。こんな簡単なこと。
俺、コイツのことが好……!!
そんな俺の様子を背中から読み取ったのか
いたずら気味ににやりと笑って
「要、気づくの遅すぎ」
と耳元で囁いた。
俺はコイツの手のひらで転がされてる
コイツの重力に引き寄せられて、引き摺られて、揺さぶられて。
俺はきっと衛星で、コイツという惑星に振り回され続けているのだろう。
あとぐぁき。
妙に要が乙女キャラになってしまいました…。
しかも話ぐだぐだだしっ最後のほう取ってつけたみたいだし!
あぁ、恥ずかしい。
要、祐希ごめんね;;
あぁ…ホントにこんな駄文を最後まで読んでくださりありがとうございました!!
ちなみに題名の「惑星キミ」はポルノグラフィティの曲から頂きました。
こんな駄文に使っちまって…ホントにすみませんでした!!(土下座)しらのたまこ 2006/10/05