悪戯天使・可愛い小悪魔

 

 

さてっと、そろそろ帰るか・・・
何となく興味本位で手に取った雑誌を棚に戻し、
脇にかけていた鞄を背負い直す。
取りあえず母さんから頼まれた本だけでも買っていこう、とレジに向かい足を踏み出した。

 


『本屋の一番見やすいところにあって山積みになってるからわかると思うわ。黄色い表紙よ〜お願いね〜。』
そう言われて朝家を出てきたが、本のタイトルはあまり聞いていなかった。
望は薄いが、まぁ覚えている記憶でも何とか帰るだろうと立ち寄った本屋には本当に黄色い表紙の本が山積みにされていた。
どうせ自分にはちんぷんかんぷんな料理の本か何かだろ、などと予想はしていたが、何分本の厚みがハンパではない。

 
一体何の本なんだ・・・・

 

「子供に初めてウザいと言われた日」

 

・・・・何だこれ。
おいおい、だから別にウザいなんて思ったことなんか一度もねーよ。
どこまで不安になりゃ気が済むんだか・・・・・

っ!!!!!!!!
突然足元に何か大きめの物が当った感触がしたかと思うと大きく躓いて危うく床とキスしてしまいそうな距離まで体がバランスを崩した。


あぶっねぇっ・・・・!!!
!?

突然床に接触する前にも関わらず目の前が真っ暗になる。
自分を抱えるように包むそれは、温かくて、ザラザラとしていて、
あぁ、これは服か、誰かが自分を受け止めていてくれたのだろうと理解することが出来た。


「おっと。」
・・・?この声って・・・
「大丈夫ですか?あれ、要くん?偶然だね。」
げ。
よりによってこの人に助けられるとは・・・・・

 

 

「てめー!!よくもやりやがったなー!!!」
「「!!」」
助けられたお礼も言えず呆然と固まっている自分の肩越しから
またまたどこかで聞いたような、今度はやけに高い、生意気そうな声が聞こえる。
思わず肩が飛び上がり、目の前にいる彼もまた、同じように肩を飛び上がらせた。

また出会ってはいけないヤツに会ってしまったような気がする・・・

恐る恐る目線を下に向ける。
そこにはいつぞやかの生意気なチビ助が腕を組んでふんぞり返っている。
と思うと、ものすごい勢いで腕を振り上げ俺を真っ直ぐに指差して叫んだ。
「あー!!!あん時のキレやすいメガネー!!!!!」
「だぁれがキレやすいメガネだゴルァァァァァァ!!!!!!!」

ゴンッ

 

 

 

 

 

 


「はい、味、チョコレートで良かったかな。はい、要くんも。」
子供達も迎えに来る親の手に捕まり家路に着く中、自分達はそれとは逆に公園へと向かう。
大きくて長い大きな手には小さくて甘そうなアイスが二つ。
適当に選んで受け取ると場の流れで三人とも近くにあったベンチに座る。
「「どーも・・・」」
て、なんで店出てまでこの二人と一緒にいんだよ俺。
しかもコイツまでちゃっかりアイス買ってもらってるし真ん中座ってるし・・・!
「さっきはごめんね。これで許してくれる?お金で償おうなんて本当は良くないことなんだけど。」
いやいやいや。アンタが謝る必要なんかないって。
「しょーがねーな。これで許してやってもいーぜー。」
現金なヤツ・・・。
「君、名前は?俺の名前は東晃一。要くんの学校の先生だよ。」
あーもう言っちゃうし・・・。このガキ調子に乗ると何言い出すかわかんねぇから下手に正体バラして欲しくなかったのに・・・。
「おれはけん。ひだまりようちえんに通ってんだっ。メガネのあにきだぜ。」
「何が『あにき』だ。泣き虫。」
「何だとー!?」
「あっはは。二人共仲が良いんだね。」
『『よくねーよ!!』』

 


いつも思うがどうしてこの人はこう、楽観的ていうかなんていうか・・・理解しがたい・・・


 

「陽だまり幼稚園てことは・・・教育実習で出会ったとかかな?」
「え、あぁ、そうです。こないだ行ったときに・・・」
一人でうんうんと呻っている時に話しかけられたので返事が遅れた。
「せんせー!メガネのヤツさー、かおりせんせーのコトす「わぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!!!」

 

こンのクソガキ!!!

 
 
「言うんじゃねぇそれを!」
「何照れんだよ、いいじゃねぇかよ別にぃ」
「テメェなぁ・・・!!」
 


「要くん?」
「え!あぁー!!いや、何でもないですよ!?ホント何も!!」
「いてててて・・・」

後ろ手にガキのこめかみに拳骨ぐりぐりをお見舞いしてやった。
ちったぁ反省しろ。


「そういえば、俺と要くんも幼稚園の教育実習の時知り合ったんだよね。ホント可愛かったっけ。」
「な・・・!」
可愛いとか・・・そういうことを今言うなっ
「はははっ」
「笑うんじゃねぇクソガキ!」
「必死で幼稚園の先生のことを守ろうとしてて、偉いと思ったなぁ。」
「や、でも東先生の方が・・・あの頃にはもう男所帯だったんでしょう?」
「うん。でも、要くんの頑張る姿を見てたら俺も頑張らなくちゃって、思ったんだよ。」
「・・・・・・。」


ホントこの人って、恥かしいことさらっと言えるんだもんなぁ。
そこがまた・・・・・・好き、なんだけど・・・・・・

「俺、もう帰るから!」
「え、もういいのかい?どうせもう暗いから送って行くよ?」
「そーだぞ、まだ幼稚園生のクソガキがこんな・・・」
「だいじょーぶだいじょーぶ!」
けんがベンチの上に上ってにしし、と笑うとジャンプしてベンチから降りようとしているのを引きとめようとした俺と東先生が立ち上がる。
「じゃー、なっ!」
と、背中を思い切り押されて東先生のいる方向につんのめった。
「うわ」
「「!!」」


生温かいものが唇に。一瞬呆然として気がつかなかったが、
目の前にある東先生の眼が自分の瞳に映っていることを悟った瞬間、体の体温が一気に上昇した。


「おしあわせに〜」
「テメェ!こンのクソガキ〜〜〜〜!!!!!!」
「じゃ〜〜〜〜〜な〜〜〜〜!!!!」
震える拳はぶつける対象がないまま持て余され。


「要くん、もう本当に暗いし、帰ろうか。送るよ。」
「あ、はい・・・」


 
全く、アイツは。悪戯天使なんだか可愛い小悪魔なんだか。
何でもお見通しかよ。

 

「要くん、今でもあの先生のコト好きだったんだね。」
「なっ!!!!!」


そんなこと言って、今一番好きなのはアンタだって知ってる癖に。
よく言うよ。


 

 

 

 
あとがき

本当に久しぶりの更新です・・・!申し訳ありませんでした;色々なジャンルに眼が眩んでおりました。
最近は本誌での君僕。萌えが吸収出来ず・・・・
たまたま下野紘さんにハマってたので写真前に載ってたな〜などと思いながらパワードを読み返しておりましたら
小悪魔天使けんちゃんが・・・!これは書くしかないと(笑)
気付いてみたら“要”も“けん”も“晃一”も皆『か行』から始まる名前なんですね・・・恋する男はか行から始まる名前wという勝手な妄想;

2007/06/07白乃たまこ 

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