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「君が好きだから、だよ。」


待ち望んでいた言葉なはずなのに。

どうして何も言えない、どうして胸の辺りが辛くなる?

本当は俺が伝えるはずだった。

それで、軽蔑されても構わないと思っていた。



「それは…何も出来ない俺への憐れみですか。」
こんな夢みたいなことを言ってくれるはずがない、貴方が俺を好きだなんて。

「何のことを言ってるんだい?」

「俺は貴方を…越えられない。俺は貴方に想われて良いような器じゃない、なのに。」
貴方は優しいから。だからいつだって俺のコトを庇う。
好きだと言ったって、どうせ俺を助けを求めてる道端に捨てられた仔猫位にしか思ってないんだろう。
本当は嬉しいはずなのに、何故だか収まらない自分の感情から、狂い始める。
「ねぇ、まだ、どうして俺が塚原君のことを好きか、ちゃんと聞いてないだろう?」
「……………」

だからそんなことわかりきっていると言ってるじゃないか。

あの人に似ているから、でも俺があの人と少し違ったから

憐れだったから、そうなんだろう?

「俺は、君が何も出来ない人間だなんて、思ってないよ。」

嘘だ。

「けど、いつも俺は貴方よりすごいことなんて出来ないし、本当に何も…」

「そんなことないよ。君はいつでも俺よりすごいことをやってのける。
生徒会に所属しながら学級委員をやったり、学業においてはいっさい手を抜かない、
みんなに頼られ、慕われている存在じゃないか。」

「そんなもの、結局何だって言うんです。」

結局それは貴方の幻影を追って努力してきた結果に過ぎない。まだこんなもので俺は満足するつもりはない。

「それは今まで自分がしてきたことを否定してるってことなの?」

それは…


「違います、だけど、俺は…
心が狭くて、嫉妬深くて、根に持つタイプだし…怒りっぽいし。」
こんな欠点だらけの人間なんて…貴方には似合わない。」

それすら乗り越えようなんて…無理な話なんだけどな。

「うん、今のは俺の言い方にもちょっと問題があったかな?
俺は塚原君の…そんなところが好きなんだよ。
それもまた、君にしか出来ないことだと思うよ?」

馬鹿な。何でこの人は自分が間違っていることに気付かない。そうじゃないんだそうじゃ…


「だから、それが憐れみじゃないのかって言ってるんです。」

「どうして。」

「もっと…もっと強い人間になってから、貴方に想いを伝えたかった。」

俺はこの気持ちが間違ってるなんて、思ったことないから。

「人間は皆、弱いものだよ。」

「でも東先生は…」

少しイラッときた。それじゃ俺の気持ちが間違ってるみたいじゃないか。

「俺は強い人間なんかじゃ、ないんだ。
俺はすごく君が好きだよ。だからこうやって強くいようと思うんじゃないか。」


「先生も…?」

俺と同じ…なのか?弱い…のか?

「うん。
だから、君もすぐに自分を責めないでいいんだから。
もっと、自分にもご褒美をあげても、いんじゃないかな。
俺は君のそういう真っ直ぐなところも好きだけど、
それじゃあ行き詰ってしまうよ。
君が望むようなことを俺がしてあげたいと思うのは、俺が強くなろうと頑張ってるってことなんだけど。」


「ごほう、び…」

だからこの人はこんなにも大きな人間なのだろうか。


「そ、俺にとってのご褒美は塚原君、君と一緒に居られること、かな。
な〜んてちょっとクサすぎだよね、うん…
まぁ、でも、これでも言いすぎてるわけではないから今は本当のことを話して欲しい、よね?」

俺が…ご褒美!?…でも悪い気がしない、というよりむしろ、嬉しい。

「俺も…貴方のことをご褒美にして生きていいんですか。」

「もちろん。お互い様ってね。」




俺は気付かされた。

人を好きになるって、すごく楽しいことなんだって。

ご褒美もあげずにずっと突っ走ってた俺にはまだ慣れないことばかりだけれど。

毎日極上のご褒美があればきっと、強くなれるって。

そして今よりずっと大きくなれたとき、

本当に人を愛するってことに、気付ける気がするから。





あとぐぁき。


こんにちわ〜。また、軽くお久しぶりになってしまいました…。
ついに完結いたしました初晃要連載、いかがでしたでしょうか。
楽しんでいただけたのなら幸いです。
感想などあればいただけると嬉しいです。
ではまた晃要連載を書く機会がありましたらまたお会いしましょう!では!

2006/11/16 しらのたまこ 

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